自動運転を実現するには、「クルマ自体の性能」と「通信インフラ」が必要になる。
「クルマ自体の性能」は、搭載するAIチップ(頭脳)、カメラやセンサー(目)によって決まる。その話も面白いが、今回は「通信インフラ」の方の話。
なぜ5Gが必要なのか?
10年ごとにジェネレーションが変わるといわれる無線通信。今は4Gから5Gへジェネレーションが変わろうとしている。なぜ変わらないといけないのか。
3Gから4Gへの変化を加速させたのは何といってもスマホだ。ガラケーはあくまでも「携帯電話」だったが、スマホは「手のひらサイズのPC」だった。となると明らかに通信するデータは大きくなる。YouTubeで動画も見るし、ネットからファイルをダウンロードもする。そんなスマホのユーザーが増えれば、当然3G回線ではデータが渋滞する。だから4Gへと変わって、私たちは快適にネットを楽しめるようになった。
では4Gから5Gへの変化を加速させているのは何か?それがスマートカーだ。自動車が「乗り物」なら、スマートカーは「乗れるスマホ」みたいなもの。オフラインだった自動車たちが、オンラインになるわけだ。当然4G回線ではデータが渋滞する。だから5Gが必要とされている。
動くものが通信するということ
スマホとスマートカーに共通するのは何だろう?それはどちらも「動き回る」というということだ。電車ではスマホを触ってる人が多いが、電車がどんなに動こうと、電波が無くなることはない。なぜだろう?
それは基地局が漏れなく通信範囲をカバーしているからだ。基地局というのは、いわゆる電波塔のこと。下図のイメージ。
(出典:総務省)
この基地局のカバー範囲のことを「セル」というが、このセル内であれば移動しても通信が途絶えない。セル外に出たら通信が途絶えて、圏外になる。
スマホなら圏外になってもイラッとするだけで済むが、スマートカーは圏外になっては困る。カメラやセンサーがあるから事故は起こさないとしても、通信できないと位置や経路の情報が分からなくなる。
でもそれでは、基地局でカバーされた範囲でしか自動運転が実現できない。圏外になった途端、ハンドルを握らされる。これはなんかスマートではない。
地球すべてを圏内にする
そこで基地局以外の方法で通信カバー範囲を広げる必要がある。田舎でも山奥でも大草原でも、カバー範囲にする方法があるだろうか。その方法が「衛星コンステレーション」である。
衛星コンステレーションとは、地球全体を大量の小型衛星で包み込むこと。地球を包み込めば、地球上に圏外は無くなる。太平洋の真ん中だって圏内になる。
どれだけ「大量」の衛星を打ち上げる必要があるのか?それは地上からどれぐらい離れた距離かによって変わる。一個の衛星がカバーできる範囲は、地上に近いほど狭くなり、地上から遠いほど広くなる。下図のイメージ。
(出典:SoftBank)
だから、地上に近いほど衛星の数が多く必要になるが、弱い電波でも地上に届くから、衛星サイズは小型でよくなる。一方、地上から遠いほど衛星の数は少なく済むが、強い電波でないと地上に届かないから、衛星サイズは大型になっていく。
衛星の打ち上げ競争
イーロン・マスクのSpaceXが打ち上げている「Starlink」や、ジェフ・ベゾスのAmazonが進める「Project Kuiper」では、地上350~550kmなので、比較的距離が近い。だから打ち上げる数も多め。Starlink衛星は約12000基、Project Kuiperでは約3200基を打ち上げる予定。
ソフトバンク傘下のOneWebは、地上1200kmで、ちょっと距離が遠い。だから打ち上げる数は少なめで、650基で済む。
(出典:satellitemap.space)
まとめ
5Gを加速させるのはスマートカーの自動運転。
地球全体をカバー範囲にするのが衛星コンステレーション。
参考
米中の新たな競争分野、5Gの車両通信 先進の携帯通信技術5Gに基づく車両通信は、米中間の新たな競争分野に発展する可能性がある。米国はようやく昨年になって、中国jp.wsj.com
(トップ画像:OneWeb)