ニュースで「暗号通貨」の文字を見ない日が無い。
一体何が起きているのか。
「暗号通貨」ってなに?
この問い以前に、もっと重要な問いがある。
「通貨」ってなに?
実はこれが分かれば、暗号通貨の技術的詳細が分からなくても、今何が起きているか理解できる。
通貨とは、「人々がモノと交換する価値があると信頼しているもの」である。この「信頼」さえ成り立てば、なんだって通貨になり得る。
例えば、第二次大戦中のドイツ軍の収容所では、捕虜の間でタバコが通貨として機能した事例がある。
捕虜への配給には物資や食料の他に、タバコがあった。タバコは喫煙者にとっては使用価値を持つが、非喫煙者にとっては何の使用価値もない。そうなると非喫煙者は自分に配給されたタバコを、喫煙者の何か別のモノと交換しようと提案する。タバコが欲しい喫煙者はそれに応じる。こうして非喫煙者はモノと交換するためにタバコをため込むようになった。喫煙者もタバコを吸うのを我慢すれば、別の喫煙者のモノと交換できる。そんなやり取りが収容所全体へ広がると、人々にとってタバコは「交換価値」を持つようになった。
タバコはどんなモノとも交換できるようになった。
なぜか?
それは人々が、タバコには別のモノと交換する価値があると「信頼」したからだ。これこそが「通貨」。
その証拠に、戦争がもうすぐ終わると知った捕虜たちは、持っているタバコを吸いつくした。どんなにタバコをため込んでても、収容所の外では、もはやタバコはただのタバコであり、別のモノと交換できないからだ。つまり、タバコは通貨としての「信頼」を失ったわけだ。
「信頼」が全て
通貨を理解するなら、この例で十分だろう。
「信頼」こそ、通貨を通貨たらしめている。
だから通貨は別にモノじゃなくてもいい。実際私たちは現金だけじゃなく、クレジットカード、キャッシュカード、電子マネー、ポイントなどを使って、実際のモノとお金を交換している。それは私たちが、その電子情報を「信頼」しているから機能している。
では暗号通貨はどうか?
取引所と呼ばれる会社(Coincheck、GMOコイン、bitFryerなど)で口座を作れば、日本円と暗号通貨を交換できる。日本円とドルを交換するのと同じだ。
あなたが持つ日本円と暗号通貨を交換するときのレートは何で決まるだろう?通貨とは「人々がモノと交換する価値があると信頼しているもの」だった。日本円はすでにこの「信頼」がある。一方、暗号通貨では買えるものがまだ限られている。つまり、モノと交換する価値があるという「信頼」がまだそこまでない。この人々の「信頼」の度合いでレートが決まる。
暗号通貨のレート急落
暗号通貨のレートが下がるということは、暗号通貨の価値が下がるということだから、暗号通貨から日本円に交換しても、より少ない日本円しか得られないということ。だから儲けを考えていた人たちはガッカリしてる。
なんでレートが下がったのか?
もうお分かりだと思うが、「信頼」が下がったからだ。
じゃあなんで信頼が下がったのか?
大きなニュースが2つあった。
1つ目が、EVシェア1位のテスラがビットコイン(暗号通貨の一種)での購入を中止したこと。2月に開始したばかりで5月に中止した。EVと暗号通貨を交換できるという「信頼」が一気に上がって一気に下がった。テスラ・ショックだ。
2つ目が、中国と米国が暗号通貨の規制を強化しているからだ。中国は暗号通貨の発行に莫大な電力が消費されているのが理由で、米国は暗号通貨の取引にセキュリティの懸念があるのが理由。いずれにせよ、規制されたらモノと交換できるという「信頼」ができなくなる。
つまり今起きているのは、暗号通貨とモノが交換できるという「信頼」が、人々の間で下がっているということだ。
まとめ
通貨とは「人々がモノと交換する価値があると信頼しているもの」。
今起きているのは、暗号通貨に対するその「信頼」の低下。
参考
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(トップ画像:Forbes)