理論

社会発展の法則性(3)

前回の記事では、人間と社会の関係として非敵対的矛盾と敵対的矛盾があること、そして相互浸透によって人間と社会は互いに影響し合うことを説明しました。 

今回は、相互浸透によって人間が社会を発展させていく過程を通して、「否定の否定」という弁証法の考え方を紹介します。 

「テクノロジー」という新たな可能性

資本主義社会は敵対的矛盾を生み出しましたが、同時に重要な役割を果たしました。 
それが、テクノロジーの発展です。 

資本主義社会の飽くなき利益の追求がなければ、これほど驚異的なスピードでテクノロジーを発展させることはできなかったでしょう。テクノロジーは自然破壊や貧困という敵対的矛盾を克服できる可能性を、私たちに示しています。 

自然破壊の克服。
今までは利益優先で「人間の生産活動=自然破壊」でしたが、再生可能エネルギー技術、省エネルギー技術、電気自動車、環境配慮型素材といったテクノロジーが、人間の生産の在り方を変えるでしょう。特に電力は人類の生活基盤なので、再生可能エネルギーは地球全体に普及させる必要があります。しかし現状そうであるように、各国が自国の利益だけを考え続ければ、再生可能エネルギーの普及は難しいでしょう。 

貧困の克服。
資本主義社会において労働者は、自分で何かを生産する手段を持たないため、自らの労働力を売ることしかできません。もし1日200円だとしても、生きるために労働力を売るしかないのです。これが「お金のために働く」という状況を作ります。AIとロボットは人間に代わる労働力になります。それは人間を労働から追放し、人間を労働力すら売れない無力な存在にすることもできますが、生きるために労働力を売らなければならない状態から人間を解放することもできます。この未来は、全てのものが商品である資本主義社会を続けるのか、新たな社会を実現するのか、人類の選択次第でしょう。 

「否定の否定」というまわり道 

テクノロジーは、私たち人類が敵対的矛盾を克服し、新たな社会を築く可能性は示していますが、それを約束するものではありません。人類は主体的な活動を通してのみ社会と相互浸透し、社会を変えていくことができるのです。どんな社会を実現したいのかは、人類が選択する必要があります。 

選択によっては、私たちは資本主義社会の限界の中で、不自由な生活を強いられるでしょう。空気が濁り、海はゴミに溢れ、AIとロボットに仕事を奪われた世界で、さらに格差は広がり、低賃金労働をしながら、国から少額支給されるベーシックインカムで細ぼそと生活している人類の姿を思い浮かべて下さい。 

あるいは別の選択では、電力は全て再生可能エネルギーで発電され、農業・水産業・工業が自動化し、食料と電力が平等に供給され、お金の存在と商品の概念が無くなり、一人ひとりが自分と社会のために労働力を使っている、こんな未来もあり得るのです。 

資本主義社会がなければテクノロジーの急速な発展はあり得なかったでしょう。そしてテクノロジーは新たな社会の実現に不可欠です。その意味で、資本主義社会は、社会発展のために必要な過程だと言えます。このような、まわり道を通る発展の法則性を「否定の否定」と呼びます。もとの状態のままでは解決できない問題を、一旦別の状態に遷移してから解決し、より発展した別の状態へと至る、という発展過程の法則性を表しています。つまり、私たちは資本主義社会という「まわり道」の段階にあり、そこでテクノロジーを発達させて、より発展した社会へ至ろうとしていると捉えることができます。そしてその結末は、私たちがテクノロジーをどのように活かすのか次第ということです。 

これまで「相対的に独立」「対立物の相互浸透」「非敵対的矛盾・敵対的矛盾」「否定の否定」といった弁証法の考え方を用いて、社会の発展を考察してきました。今の資本主義社会が社会発展の一過程であり、目指すべき新たな社会へ発展するためには私たちの主体的な活動が必要だということが分かったと思います。