理論

矛盾の世界(6)

これまでの記事で、「矛盾とは対立物の統一」「矛盾はあらゆる事物がもつ性質」「矛盾は事物を一時的・相対的であると捉えることで現れる」という考え説明してきました。その上で「相対的な独立」や「普遍性と特殊性」といった矛盾の在り方を紹介しました。

今回は「矛盾の世界」の記事のラストとして、「対立物の相互浸透」という重要な考え方を説明します。あらゆる事物が相対的・一時的であるのと同様に、”矛盾の在り方”自身も変化していきます。「対立物の相互浸透」はその変化、つまり対立物の統一のメカニズムに関する考え方です。

媒介的な矛盾 → 直接的な矛盾

例えば、「自分と他人」を考えてみましょう。ここにAさんとBさんがいるとします。Aさんにとって”Aさん自身”は自分のことですが、Bさんにとって”Aさん自身”は他人になります。つまり”Aさん自身”は自分であり他人でもあるので、対立物が統一されている(矛盾している)ことになります。ここでこの矛盾は「Aさんにとって」「Bさんにとって」というように相対的に捉えたことによって現れているので、媒介的な矛盾になります。

AさんとBさんが会話をすることによって、”Aさん自身”はBさんの思想を受け取り、自身の脳にBさんの思想が残ります。この思想に影響を受けることで”Aさん自身”は、少しづつですがBさん化していきます。AさんにとってBさんは他人なので、”Aさん自身”が他人化しているといえます。ここで矛盾の在り方に変化が生じています。先ほどまでは媒介的な矛盾でしたが、Aさんにとって”Aさん自身”は「自分」であると同時に、Aさんにとって”Aさん自身”が「他人」化し始めていることになり、直接的な矛盾になっています。

対立物の相互浸透

そして更にAさんとBさんが互いの思想を交換しあうことで、”Aさん自身”という自分の他人化が進んでいきます。これはBさんにとっても同じことで、”Bさん自身”の自分の他人化も進んでいきます。その相互作用のことを弁証法では「対立物の相互浸透」と呼んでいます。

矛盾とは対立物の統一」であるということは既に説明しました。つまり相互浸透とは、対立物が統一されていく過程・メカニズムを表しています。 上記の例でも分かるように、相互浸透は意識しないと気付けない形で起きています。社会に関しても、よりダイナミックな形でこの相互浸透が起きており、そこを意識することが世界を正確に認識するカギとなります。